噛む習慣
子どもの時から「噛む」習慣をつけよう~未来の健康のために
子どもの成長には、バランスの取れた食事や適度な運動が欠かせません。
しかし、それ以上に重要なのが「しっかり噛む」という習慣です。
噛むことは単なる食事の一環ではなく、体全体の健康を支える重要な役割を果たします。
このページでは、噛むことの健康効果やだ液の作用、健康的な食材選びのポイントについて詳しく解説します。
だ液の9つの作用—噛むことで生まれる健康効果
噛むことによって分泌される「だ液」には、以下のような9つの重要な作用があります。
1. 抗菌作用
だ液には細菌やウイルスの増殖を抑える成分が含まれています。
例えば、リゾチームやラクトフェリンといった酵素は、細菌の細胞壁を分解したり、増殖を防いだりします。
この抗菌作用により、虫歯や歯周病の原因となる細菌から歯や歯茎を守ります。
また、だ液は口腔内の微生物バランスを整え、健康な口内環境を保つ役割を果たします。
この自然の防御機能は、しっかり噛むことでだ液の分泌を促進することでさらに効果を高めることができます。
2. 自浄作用
だ液は、口腔内に残った食べ物のカスや細菌を洗い流す「自浄作用」を持っています。
食事後、だ液が食べ物の粒子を溶かし、舌や頬、歯の表面から運び出すことで、虫歯や歯周病のリスクを軽減します。
特に、よく噛むことでだ液の量が増え、この自浄作用が強化されます。口腔内を清潔に保つためには、噛む回数を増やし、だ液の流れを活発にすることが大切です。
3. 消化作用
だ液にはアミラーゼという酵素が含まれており、食べ物中の炭水化物を分解して消化を助けます。
これにより、胃や腸への負担が軽減され、効率的な栄養吸収が可能になります。
特に、だ液で食べ物が柔らかくなることで、胃酸の過剰分泌を防ぎ、胃の健康も保たれます。
噛むことを意識することで、だ液がたくさん分泌され、消化作用がより効果的に働きます。
4. 粘膜保護作用
だ液は口腔内の粘膜を潤し、乾燥や刺激から守る「粘膜保護作用」を持っています。
だ液の粘性成分は、口の中をコーティングするように働き、口内炎や傷つきやすい状態を防ぎます。
また、だ液は熱い食べ物や酸性の飲み物が直接粘膜を傷つけないようにするクッションのような役割も果たします。
この保護機能により、口腔内の健康が維持されます。
5. 食塊形成作用
だ液は、食べ物を柔らかくしながらまとめ、飲み込みやすい状態にする「食塊形成作用」を持っています。
この作用により、食べ物がのどを通りやすくなり、窒息のリスクを軽減します。
また、適切な食塊が形成されることで、胃や腸での消化もスムーズになります。
特に小さな子どもや高齢者には、この作用が重要で、だ液分泌を促すためによく噛むことが推奨されます。
6. pH緩衝作用
だ液は酸性やアルカリ性に偏った口腔内のpHを調整し、適切な状態に保つ「pH緩衝作用」を持っています。
例えば、食後に口の中が酸性に傾くと、だ液の緩衝作用が働いて中和し、歯のエナメル質が溶けるのを防ぎます。
この機能により、虫歯のリスクが大幅に減少します。
特に酸性食品や飲料を摂取した後は、噛むことでだ液を分泌させ、緩衝作用を高めることが大切です。
7. 粘膜修復作用
だ液に含まれる成分には、傷ついた粘膜を修復する力があります。
例えば、だ液中の成長因子は細胞の再生を促進し、口内炎や小さな傷を早く治すのに役立ちます。
この作用は、だ液の潤滑効果と相まって、傷口を守りながら修復を進めます。
噛むことでだ液が十分に分泌されると、この粘膜修復作用が強化され、口腔内の健康を保つ助けになります。
8. 再石灰化作用
だ液には、歯の表面を修復する「再石灰化作用」があります。
だ液中に含まれるカルシウムやリンが、歯のエナメル質に沈着し、酸によるダメージを補修します。
この作用により、初期の虫歯を防ぎ、歯を強化することができます。
再石灰化を促進するには、適切な噛む習慣とバランスの取れた食事が欠かせません。
9. 水分平衡作用
だ液は口腔内の水分を保ち、乾燥を防ぐ「水分平衡作用」を持っています。
口が乾燥すると細菌が増殖しやすくなりますが、だ液が適度に分泌されることで、湿潤状態が保たれます。
これにより、口臭や感染症のリスクを低減します。水分バランスを整えるには、だ液の分泌を活発にするために、よく噛むことと十分な水分摂取が重要です。
このように、だ液は子どもの健康を守る重要な要素であり、噛む習慣によってその分泌を促すことができます。
「噛む」ことがもたらす健康効果
子どもがよく噛むことで得られる健康効果には、以下のようなものがあります。
ストレスの解消
よく噛むことは、リラックス効果をもたらします。
噛む動作が副交感神経を刺激し、身体をリラックスさせるため、ストレスが軽減されます。
特に、食事の時間にしっかり噛むことで、心身ともに落ち着き、ストレスを感じにくくなります。
噛むことが心の健康をサポートし、感情の安定にも寄与するため、子どもが日常的に噛む習慣を持つことは、ストレス管理にもつながります。
生活習慣病を予防
よく噛むことは、生活習慣病予防にも効果的です。
しっかり噛むことで、食べ物が細かくなり、満腹感を感じやすくなります。
これにより、過食を防ぐことができ、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の予防につながります。
また、噛むことによって消化が促進され、胃や腸への負担も軽減されます。
良い食習慣を作ることで、将来の健康維持に大きな影響を与えます。
アゴの正常な成長
よく噛むことで、アゴの発達を促進します。
噛むことは顎の筋肉を使うため、アゴの骨がしっかりと発達し、正常な成長をサポートします。
特に、噛みごたえのある食べ物(固い野菜や果物など)は顎を強化し、歯並びを整える効果もあります。
アゴの成長が順調であれば、将来の歯並びや顔のバランスも良くなり、健康的な口腔環境が保たれます。
味覚の発達
噛むことで、味覚が発達します。食べ物が細かくなることで、舌が食べ物の味をしっかりと感じるようになります。
特に固形物や新鮮な食材をよく噛んで食べることで、味覚の感度が高まり、食べ物の多様な味を楽しむことができます。
子どもの頃に良く噛む習慣をつけることで、偏食を防ぎ、バランスの取れた食生活を送るための土台が作られます。
発音がきれいに
よく噛むことは、発音にも良い影響を与えます。
顎や舌の筋肉を使うことで、発声がスムーズになり、口の中の動きが活発になります。
特に子どもの発音が不明瞭な時期に、よく噛むことを意識すると、発音がきれいになり、言葉がはっきりと聞こえるようになります。
噛むことが、言語の発達をサポートし、自己表現が豊かになる手助けをします。
脳の働きが活発に
よく噛むことは、脳の働きを活発にする効果があります。噛むことによって脳への血流が増え、脳の活性化が促進されます。
また、噛むことで神経伝達がスムーズになり、記憶力や集中力が向上します。
特に成長期の子どもにとって、噛む習慣が脳の発達をサポートし、学習能力や思考力を高める手助けとなります。
よく噛むことで、頭が良くなるという科学的根拠もあります。
消化を促進
よく噛むことは、消化を促進します。食べ物を細かくすることで、胃や腸での消化がスムーズになり、栄養吸収も効率的に行われます。
特に、唾液の分泌が増えることで、食べ物がより柔らかくなり、消化器官の負担が軽減されます。
また、よく噛むことで満腹感が早く得られるため、過食を防ぎ、胃腸に優しい食事ができます。
これにより、健康的な消化と体調維持が実現します。
噛むことの大切さを子どもに教えることで、将来の健康に大きく寄与することができます。
歯の健康に良い食材選びのポイント~「まごわやさしいこ」
噛む力を育むためには、食材選びも重要です。健康的な食事のポイントとして覚えやすいのが「まごわやさしいこ」という言葉です。
まめ(豆類):大豆、納豆、豆腐などの良質なたんぱく質は、歯や顎の健康に役立ちます。
ごま(種実類):ごまやナッツ類に含まれるカルシウムやミネラルが、歯の強化を助けます。
わかめ(海藻):海藻類に豊富なヨウ素が成長期の発達をサポートします。
やさい(野菜):ビタミンやミネラルが豊富で、歯茎の健康を保ちます。
さかな(魚介類):カルシウムとビタミンDが豊富な魚は、歯の再石灰化を促進します。
しいたけ(きのこ類):きのこ類に含まれるビタミンDがカルシウムの吸収を助けます。
いも(いも類):芋類はエネルギー源として優れ、消化吸収も良い食品です。
こうそ(発酵食品):消化を助ける酵素を含む食材で、腸内環境を整え、健康をサポートします。
これらの食品を日々の食事に取り入れ、バランスの良い食生活を心がけましょう。
奥歯を使ってしっかり噛もう
奥歯は噛む力を支える重要な役割を担っています。
奥歯をしっかり使って噛むことで、顎の筋肉が強化され、歯並びが安定しやすくなります。
また、咀嚼回数が増えるとだ液の分泌も促進され、虫歯や歯周病の予防につながります。
奥歯を使うための工夫
水分を少なくする
食べ物に含まれる水分が多いと、噛む回数が少なくなりがちです。
水分を少なくすることで、食材がしっかり噛め、奥歯の使用を促進できます。
例えば、野菜を軽く茹でる程度にすると、噛む力を使いやすくなります。
食材を大きく切る
食材を大きめに切ることで、噛む回数が増えます。
小さく切りすぎると、食べ物がすぐに飲み込まれ、奥歯を使う機会が減少します。大きめの食材をしっかり噛むことで、顎の筋力が強化されます。
食材を組み合わせてみる
異なる食材を組み合わせることで、噛む楽しみが増し、奥歯をしっかり使うことができます。
硬い食材と柔らかい食材を合わせると、噛むことでバランスよく顎を動かすことができ、噛む力が鍛えられます。
加熱時間を工夫する
食材を適切に加熱することで、噛みやすさを調整できます。
過剰に加熱すると柔らかすぎて噛む回数が減り、噛む力が弱くなります。適度な加熱で食材を硬さと柔らかさのバランスよく仕上げることがポイントです。
子どもが奥歯を使わずに噛む癖がある場合、歯科医師に相談し、早期に改善策を取り入れることが重要です。
「噛む」ことは、子どもの成長と健康を支える基盤です。
噛む習慣をつけることで、だ液の作用を活かし、食事を通じて健康な体づくりをサポートします。
弁天町やまうち歯科では、食事や噛む習慣についてのアドバイスも行っています。お子さまの健康を守るために、ぜひ当院にご相談ください。一緒に健やかな未来を目指しましょう!